「これを聞いたらもう、幼なじみには戻れないって言った理由も分かっただろう?」


 コクン、とその胸に頭を押し付ける。

 
 幼なじみじゃいられない理由。


 私を、好きだという・・・・・理由。


 好きだと・・・・・。



「今すぐにって言わないけど、考えて」



「え・・・・」



「幼なじみじゃなくて、俺の側に居たいかって」


 そう言うと、ぐっと体を更に引き寄せる。


 そんな風にされることが、恥ずかしいけど不思議と嫌じゃなかった。


 男の人に抱きしめられる。


 指を絡める、恋人つなぎ。


 そんな初めての事に、ドキドキと胸は激しく鳴り響いていたけど、嫌じゃなかった。



「後姿・・・」



「え?後姿?」


「うん・・・後姿ばっかり見てた。いっつも、見るのは後姿だった。だから、振り向いてくれないって思ってた」


 涙が一筋流れ落ちる。


 その後を追うように、次から次へと流れる涙で視界が揺らぐ。


 声が震える。


 でも、嬉しかった。


 後姿じゃなくて、向かい合う視線。


 私の瞳には榛くん。


 榛くんの瞳には私が。


 視線の先に映っている事が。


 後姿を追いかける私の視線に気が付かなかった?


 いつもいつも、振り向いて欲しくて見つめていた事を・・・。