「帰れるか?」


「うん」


 紙パックをゴミ箱に捨てて、私たちは家に向かって歩き出す。


 隣で並んで帰る帰り道。


 この前は熱でよく覚えていなかった、一緒に帰る帰り道。


 隣に並ぶ背の高い榛くん。


 私達、また、前みたいに幼なじみの関係に戻れるのかな・・・。


 
 ちらっと横の榛くんを見ると、榛くんも私を見ていて、ばっちりと目が合う。


「あ・・・」


 パッと逸らして俯く私の頭上で、ハハハって小さく笑う声がした。



「こうやって帰るの久しぶりだよな」



「うん、そうだね」


 こうやって普通に話すのも、久しぶりだよ?


 視線をそっと向けると、まっすぐに前を向いて歩く榛くんの顔に夕日が当たって、髪の毛の下に濃い影を落とす。


 こうやって話していると忘れてしまう。


 榛くんは私を避けていた事を。


 今なら・・・聞いたら理由を教えてくれる・・・かも知れない。



「榛くん・・・」


「ん?」


「・・・・・」


 いざ聞こうと思うと、その返事を考えて怖くなる。


 今のままでは嫌だと思っているのに、それを確かめるのは怖い。


 怖くて、聞こうとする唇が震える。


「何?」


「あ・・・うん・・・あのね・・・」



 それから先が出てこない。


「言いにくい事?」



「・・・あのね・・・その・・・」


 もう聞くしかない。


 聞いてその答えを受け止めるしかない。


「私の事・・・・・嫌い・・・なの?」



 小さい、本当に小さい声でそう言った。