今にも落ちそうなほどに、涙で潤む瞳に映る榛くんは眼鏡の奥に瞳を僅かに開いて視線を私の僅か後ろに向ける。
よかった・・・・・気が付いてくれた・・・・・
未だにその手は私の太ももを触っていた。
その手が動くたびに私の視界はだんだんと歪んでいく。
榛くんの顔もゆらゆらと揺れて、滲む。
ポロッと一粒零れ落ちた涙―――――。
「何してるんですか!!!!!」
涙が落ちたと同時に、榛くんの低い声が満員の電車の中に響いた。
その手が私の太ももから離れて、榛くんの腕に掴まれた。
私のすぐ後ろの、一見すると普通のサラリーマン風のスーツ姿の40代くらいの男の人は、慌てたように掴まれた手を振りほどこうとしていた。
「俺はあなたを許しませんよ」
低く唸るようにそう言った榛くんの声は、私が初めて聞く怒気を含んだ声だった。
周りの男の人たちにも取り押さえられて、そのサラリーマン風の男性は観念したように大人しくなる。
「美伊、もう大丈夫だから」
そう優しく言う榛くんの声に涙腺は完全に崩壊した。
「ふぇ・・・・・こわ・・怖かっ・・・た・・・は・・榛く・・・ん・・・ッ!」
安心したのと怖かったのが一気に押し寄せて、榛くんの胸にすがりついた。
そんな私を榛くんはゆっくりと抱きしめてくれた。
背中をぽんぽんとさすりながら、大丈夫って何回も繰り返して。
しゃくりあげるくらい泣く私を、その胸にすっぽりと包み込むように抱きしめてくれた。
止まる事を知らない私の涙腺は、駅に着いてもまだ壊れたままで、駅員さんに痴漢の男性を引き渡して、事情を説明して榛くんが戻ってきてもヒックヒックと泣いていた。
「もう大丈夫だって、な?」
「う・・・ん・・・ひっ・・・」
駅からの帰り道、一緒に歩きながら榛くんが顔を覗き込みながらそう言ってくれるけど、制御不能の涙腺は私の意志なんか完全に無視で・・・・・。
「ちょっと待ってて」
そう言うと榛くんは駅前のコンビに入って行った。
2・3分してから走って帰ってきた榛くんは、コンビの袋の中からミルクティの紙パックを取り出して、私に差し出した。
「これ飲んで」
「う・・・ん・・・・ひっ・・・」
ストローまで差してくれて差し出されたミルクティは、私が学校でよく飲んでるのと同じ物。
偶然なのかそれとも、知ってて買ってくれたのか。
そんな事をぼんやりと思いながら、ゆっくりとミルクティを飲む。
少し甘いその味に、冷たい液体が喉を通る感触に、少し気持ちが落ち着いた気がした。
コンビにの前にある小さな公園のベンチに腰掛けて、ゆっくりとミルクティを飲む私を、榛くんは缶コーヒーを飲みながら待ってくれた。
飲んでは深呼吸を繰り返して、心を落ち着ける。
太ももにさっきの痴漢の手の感触がまだ残っていて、怖いって気持ちは消えてくれない。
それでも、榛くんが側にいてくれることで、大丈夫って安心できた。
最後のミルクティを飲み終えた頃には、涙も止まって、泣きすぎてひりひりとする目や頬が恥ずかしい。
「落ち着いた?」
「うん・・・・・ごめんね・・・また、迷惑かけて・・・」
紙パックを握る手に力が入って、紙パックが少しだけへこんだ。
榛くんに視線を向けることが出来なくて、へこんだ紙パックをいじりながら下を向く。
「早く気がついてやれなくてゴメン」
そんな言葉が聞こえて来て、思わず顔を上げる。
「そんなっ、榛くんは謝らないで・・・。私、凄く怖くて・・・どうしていいか分からなくて・・・。榛くんが一緒に乗っててくれて、本当に良かったって思ってるんだから・・・。一人だったら・・・」
また、思い出してゾワッと鳥肌が立つ。
ブルッ身震いする。
本当に、同じ電車で良かった・・・・・。
よかった・・・・・気が付いてくれた・・・・・
未だにその手は私の太ももを触っていた。
その手が動くたびに私の視界はだんだんと歪んでいく。
榛くんの顔もゆらゆらと揺れて、滲む。
ポロッと一粒零れ落ちた涙―――――。
「何してるんですか!!!!!」
涙が落ちたと同時に、榛くんの低い声が満員の電車の中に響いた。
その手が私の太ももから離れて、榛くんの腕に掴まれた。
私のすぐ後ろの、一見すると普通のサラリーマン風のスーツ姿の40代くらいの男の人は、慌てたように掴まれた手を振りほどこうとしていた。
「俺はあなたを許しませんよ」
低く唸るようにそう言った榛くんの声は、私が初めて聞く怒気を含んだ声だった。
周りの男の人たちにも取り押さえられて、そのサラリーマン風の男性は観念したように大人しくなる。
「美伊、もう大丈夫だから」
そう優しく言う榛くんの声に涙腺は完全に崩壊した。
「ふぇ・・・・・こわ・・怖かっ・・・た・・・は・・榛く・・・ん・・・ッ!」
安心したのと怖かったのが一気に押し寄せて、榛くんの胸にすがりついた。
そんな私を榛くんはゆっくりと抱きしめてくれた。
背中をぽんぽんとさすりながら、大丈夫って何回も繰り返して。
しゃくりあげるくらい泣く私を、その胸にすっぽりと包み込むように抱きしめてくれた。
止まる事を知らない私の涙腺は、駅に着いてもまだ壊れたままで、駅員さんに痴漢の男性を引き渡して、事情を説明して榛くんが戻ってきてもヒックヒックと泣いていた。
「もう大丈夫だって、な?」
「う・・・ん・・・ひっ・・・」
駅からの帰り道、一緒に歩きながら榛くんが顔を覗き込みながらそう言ってくれるけど、制御不能の涙腺は私の意志なんか完全に無視で・・・・・。
「ちょっと待ってて」
そう言うと榛くんは駅前のコンビに入って行った。
2・3分してから走って帰ってきた榛くんは、コンビの袋の中からミルクティの紙パックを取り出して、私に差し出した。
「これ飲んで」
「う・・・ん・・・・ひっ・・・」
ストローまで差してくれて差し出されたミルクティは、私が学校でよく飲んでるのと同じ物。
偶然なのかそれとも、知ってて買ってくれたのか。
そんな事をぼんやりと思いながら、ゆっくりとミルクティを飲む。
少し甘いその味に、冷たい液体が喉を通る感触に、少し気持ちが落ち着いた気がした。
コンビにの前にある小さな公園のベンチに腰掛けて、ゆっくりとミルクティを飲む私を、榛くんは缶コーヒーを飲みながら待ってくれた。
飲んでは深呼吸を繰り返して、心を落ち着ける。
太ももにさっきの痴漢の手の感触がまだ残っていて、怖いって気持ちは消えてくれない。
それでも、榛くんが側にいてくれることで、大丈夫って安心できた。
最後のミルクティを飲み終えた頃には、涙も止まって、泣きすぎてひりひりとする目や頬が恥ずかしい。
「落ち着いた?」
「うん・・・・・ごめんね・・・また、迷惑かけて・・・」
紙パックを握る手に力が入って、紙パックが少しだけへこんだ。
榛くんに視線を向けることが出来なくて、へこんだ紙パックをいじりながら下を向く。
「早く気がついてやれなくてゴメン」
そんな言葉が聞こえて来て、思わず顔を上げる。
「そんなっ、榛くんは謝らないで・・・。私、凄く怖くて・・・どうしていいか分からなくて・・・。榛くんが一緒に乗っててくれて、本当に良かったって思ってるんだから・・・。一人だったら・・・」
また、思い出してゾワッと鳥肌が立つ。
ブルッ身震いする。
本当に、同じ電車で良かった・・・・・。

