結局、また、後姿を追いかけてる私がいる。


 綾と降りる駅が違うから、結局最終的には榛くんの後を追う形になってしまう。


 込み合った電車の中で、私と榛くんは向き合う形で電車に揺られていた。


 一本ずらせば良かったと少し後悔していた。


 人ごみが苦手な私はこの満員電車が大の苦手。


 好きな人はいないだろうけど。


 目の前に榛くんの白いシャツがあって、揺れるたびに榛くんの香水か何かの良い匂いがして、意識してしまう自分が恥ずかしい。

 ガタン―――ッ!


 と大きく揺れた。


 その時、太ももの辺りで何かが動いた。

 揺れた拍子に誰かのバッグが当たったのかと思っていた。

 けれど、その何かは明らかに意思を持って動いていた。


 太ももの後ろを撫でるように下から這い上がるように動く。


 一気に全身に鳥肌が立って、ビクッと肩が揺れる。

 
 さわさわと撫で回すように太ももを這い回る何かは、誰かの手・・・・・。


 汗ばんだように少し湿り気を帯びたその手は、太ももの内側を探るように少しづつ動いてくる。


 ・・・・いやっ・・・怖いっ・・・・!!!!


 その感触に吐き気が襲ってくる。


 ・・・やっ・・・助けて・・・・


 声に出したいのに、喉の奥はカラカラになったように乾いていて、声にならない。


 その間も無遠慮にその手は上へと侵入しようしてくる。


「は・・・はる・・・く・・・」


 やっと出た声は掠れてとても聞こえるとは思えない声だった。


 涙の溜まった瞳をやっとの思いで上げる。


 スカートの前でバッグを掴んでいた右手を、榛くんの白いシャツに伸ばす。


 僅かに掴んだシャツの裾をギュッと握り締めた。


 眼鏡の視線が私に向いた。


 私は涙で潤む瞳でその瞳を見つめ返す。


 気づいて・・・・・榛くん・・・お願いっ・・・・・!