俺はあの日から、若奈のことが頭から離れない。

「何でだよ」

家に一人でいるのに、思わず声を上げていた。

とりあえず、若奈に電話しようか。

気分を変えるために、外へ出た。

「太ちゃん!」

そこに若奈がいた。

「どうしたの?」

「いや……ただ外歩いてるだけ」

「ふーん」

俺は若奈と目を合わせられず、下を向いていた。

「太ちゃん、コレ見て」

そう言われて顔を上げると

……チュ

「んふ♡」

若奈にキスされた。

「何すんだよ」

「したいなーと思って」

「したいなじゃねぇよ。俺には若奈じゃない別の女がいるんだよ」

「知らないよそんなの」

「は?若奈、お前そんなやつじゃなかったよな」

「ずっとこうよ。あなたが見ていたのは本当の私じゃなかったのよ、きっと」

「……」

「本当の私を見せてあげる」

そう言って俺の腰に手をまわし、帰っていった。


……わかった。

俺が若奈が頭から離れないわけが。

自分の中で梨里は俺の初恋。

けど、本当の初恋は若奈。

それに気づいてしまったことが怖かったんだ。

あと、俺の知っている若奈は若奈じゃない。

本当の若奈は、アメリカから帰国して俺の目の前に居る若奈なんだ。