――――コンコン

「失礼します」

……あれ? 保健の先生がいない。

「あっ、先生なら今さっき、職員室に戻っちゃいましたよ」

甘く、可愛らしい感じの声で言われた。

顔は、すんげー可愛いって感じではないが、俺的にはすごい好み?だし、可愛いと思う。

「そ、うですか」

おいおい、何を緊張している、俺!

そう言って、名前も知らぬ彼女の前のソファに腰掛けた。

「痛ったそー。 大丈夫ですか?」

そう言葉を発した彼女は、立ち上がり、俺の横に座ったかと思えば、痛めた右手をなでてきた。

……やべ。 勃っちまう。

は?俺ってこんな、純粋じゃねえよな……。

「大丈夫、大丈夫です」

そっけない返事を返してしまった。

「利き手、どっちですか?」

「……左」

そう。俺って左利きなの。

「ホント!? 私と一緒だ♪ 私も、左利きなんですよ。 でも、右手じゃないだけ、良かったですね、そのケガ」

言葉と同時に見せる可愛らしい笑顔。

これ、完全にやられたな。

優しい気遣いも、ありがたい。

せめて、名前でも、聞いた方がいいかな~……。

「あのっ、お名前、何というんですか?」

俺が聞きたいことを、彼女から、聞いてくれた。

それだけで、俺の心臓はバックバク。

「坂口太雅……です」

「太雅くんかぁ。 かっこいい名前ですね♪」

名前を、しかも下の名前を呼ばれ、ちょっとテンションが上がってしまった。

すげー人なつっこい性格なんだろうな。

「あなたは……?」

なぜか、恐る恐る聞いてしまった。

きっと、緊張のせいだ。

「北原梨里と申します」

軽く会釈をしたあと、究極の梨里スマイルを見せた。