誰かに手首をつかまれた。

「ハァ、ハァ……」

息を荒して、涙でクシャクシャな顔をその人に向ける。

誰かって……

「太雅……くん」

しか、いるわけないじゃん。。。

「梨里、ハァハァ……やっと、捕まえた」

追いかけて来てくれたんだ。

そりゃ、こんな私に比べたら、太雅くんの足の速さになんて、敵うわけないって。

太雅くんは続けて、

「梨里……さん、ごめん」

「太雅くん」

私は太雅くんの言葉に食い気味に、大好きな彼の名前を呼んだ。

今、私が思ってること、感じてること。

しっかり伝えなきゃ。

「ごめんね、こんなに醜くて」

太雅くんは真剣な顔つきで、首を横に振る。

「今日は誘ってくれて本当にありがとう。おかげですごく楽しかった。太雅くんとじゃなきゃ、絶対楽しめなかった。ちょっとの間、夢、見てたみたいだったよ。 けど、愛果……さん?に言われてやっと現実見れた。太雅くんは、私といても……」

いけない、また涙が……。

「こんな私が太雅くんの隣にいるなんて、申し訳なさすぎる。 でも、こうやって涙が出てきちゃうのは……、太雅くんのことが――――」

――――ぎゅっ

い、今私は?

太雅くんに抱きしめられている。

「梨里」

低い、私の大好きな声で、耳元で名前を、しかも呼び捨てで囁かれた。

「……好きだよ」

え???

「え?」

思わず声に出てしまった。

太雅くんは、私を自分の体から離し、

「もう1回、俺に今の言葉を言えと?」

ちょっと照れて言った。

「ううん。十分聞こえたから。 私も、太雅くんが大好き!」

そう言ったら、また抱きしめられた。

私はなぜか素直に受け止めることができて、自然と手を後ろに回していた。

そうしたら、また太雅くんは自分の体から私を離し、

「いい?」

と言った。

何のことかな??

そんなことも考えてるうちに、太雅くんの顔が私に近づいてきた。

そして――――

唇と唇が重なった。