別の店に向かおうとしていたとき。

「あれ?太Pじゃん」

太P!?

こうやって呼ぶやつって……。

振り返ると、、、

「うーわっ」

「うわって、何よ!うわって!!」

こいつは、愛果(アイカ)という、俺が女と遊んでた時期、回数で言うと1番抱いた女だ。

でも、抱いた女の中では1番嫌いだ。

こいつがいいのは体だけ。

あとは性格とかマジで終わってる嫌われ者。

「あっれ~? 太Pって妹いたっけ??」

こいつ、最悪だ。

「妹じゃねぇよ」

俺は低い声でそう答えた。

チラッと梨里を見ると、うつむいてしまっている。

「じゃあ何?」

何だと?梨里はものじゃねぇよ。

愛果は続けて

「まさか彼女? 太Pそんなんが趣味だったけ? もう、アタシのときとは違う顔してるし。何かあったの?」

梨里の前で、最低な言葉を口にした。

俺にとっても最低な言葉だ。

「た、太雅くん……」

小さな声で梨里は俺の名前を呼ぶ。

「どうした?」

愛果への声とは違う、優しい声で俺は尋ねる。

梨里はうつむいたまま、

「私、帰るね。 楽しかった、ありがとう」

くるりと方向を出口に変え、梨里は走って逃げてしまった。

俺は見逃さなかった。

梨里の目から一筋の涙が流れていたことを。