焦がれて





消えそうな小さな声。だけど静寂に包まれた廊下で、すぐ近くにいる彼の耳に入るには十分だった。



「なんだよ、隠し事って。」


「…そういうんならいいよ」



「は?意味わかんね。言いたいことあんならはっきり言えばいいだろ!」



「そっちこそ、…陸人こそ、言いたいことあったんじゃないの?」



実は合コンに元カノがいたんだって。それだけ言ってくれたらいい。


一緒に帰っただとか、そんなことまで言わなくていい。これだけ言ってくれれば、そっかって許せるのに。




「何だよ、言いたいことって」


本当に分からないというようにその整った顔をしかめる




「こないだ、言いかけてやめたことあったじゃん…」



元カノがくるって知って、不安にならないよう電話かけてきてくれたんじゃないの?