『琴実ちゃん!!ど、どうしたの!?また俺のせい!?』




戻って来たハナビシさんは、慌てた様子で駆け寄ってきた。


そして、優しく私の頬を伝う雫をそっと撫でる。





「…違うんです。違うん…です」




私は泣きながら、出来るだけの笑顔を作った。







『うん。大丈夫だよ。君の楽園はすぐ傍まできてるよ』







あの日見た赤い月がすぐそこにあった。



ああ、あの月は夢じゃなくて本当にあったんだ。


私が見た赤い月は、この人の瞳だったんだ。



赤い月が導くヒカリは、楽園への道しるべ。










私はあの時、楽園の世界に招待されたんだ。