鉄の探偵



紺色のブレザーに灰色のスラックス。


手には大きなスクールバックにビニール傘。


周りには田んぼと家と線路。


駅に向かう哲也はいつもと変わらない風景にただただ退屈していた。


警察官だった父と死別し1年、去年の今頃なら出勤する父と2人でこの道を歩いていた。


他愛もない会話。


あまりおしゃべりな方でない2人であったが、朝のこの時間はよくしゃべった。


2人の大好きな推理小説の話をよくしていた。


警察官の父の影響でその手の読みものはこれでもかというほど読まされていた。


あの作品のトリックは面白かった、オチがつまらなかった、などとよく話していたものだ。


あのときは本当に幸せだったなぁ。


今が不幸というわけではない。


ただ、やはり大きく心に空いた穴はなかなか埋めることはできないものだ。


形見の腕時計を確認すると、7時30分。