学校が終わると、あたしは家に帰った

アパートの階段を上がり、家の玄関を開けると狭い部屋の中で母親は化粧をしていた
「ちょっと、何やってたのよ優歌?
出掛けるんだから、早く帰って来なさいって言ったでしょ?」

母親は真っ赤な口紅を塗りながら、あたしに言った…
「…また、あいつんとこ行くのかよ…?」

「当たり前でしょ?
あたしが働かなきゃ、どうやって食べてくのよ?
あんな甲斐性無しがいるのに…」
母親はそう言うと部屋の中で、一升瓶に囲まれ、顔を赤くして大の字になってイビキを書く父親を見た

あたしも父親を見て、母親に聞く
「…今日の飯はどうすんだ?」
手に持ってた買い物袋を、流しのシンクに置く
「いらないわ
食べてくるから」
「解った…」
あたしが返事をすると、母親は部屋を出ていった

あたしは飯の準備をして、イビキをかいて寝ている父親を起こす
「おい、飯出来たぞ
食わねぇのかよ?」
身体を揺すられ、父親は起きる
「…なんだ?帰って来てたのかよ?
…おい、酒は?」
「もうねぇよ
全部飲んだだろ」
「出せよ
あるんだろ?」
「ねぇって」
「…出せ…」
「だからねぇって」
「なら買ってこい」
「金がねぇよ」
「あるんだろ?」
「ねぇよ」
暫く同じことを繰り返しているうちに、会話が止まったと思うと、父親が立ち上がって、あたしの胸ぐらを掴む