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「あれ、イッチーなにしてんの?」
締め切りが迫る中、私はダッシュでトーンを貼ってると言うのに
資料を仕舞いに本棚へ向った一条くんはしゃがんだまま立ち上がらない
見兼ねた私が、立ち上がろうとすると
何年も前の古いスケッチブックから一枚を破り取って綺麗に折りたたみ、そのまま胸ポケットにあった手帳に挟んでしまった
「…え。今何入れたの。」
「俺の命の恩人ですよ。」
懐かしい物見つけたなぁ
こんなところにあったのか、
とニマニマしている一条くんは、正直言って気色が悪い
意味不明だけど聞いても無駄そうなので
私は再びトーンと向かい合う
「先輩、ありがとうございました。」
唐突な感謝の言葉に驚いて顔を上げると
二ヘラと笑う瞳と目が合った
何に対して言ってるんだか
理解に苦しみつつも、取り敢えず
あー、うん。と微笑を返しておく
一条くんはそれを確認すると笑みを崩さないまま持ち場に戻って席についた
「あ、苺アイスいります?」
「それはあんたが好きな味でしょ?
私はチョコミント派だから。」
ですよねー、と続ける一条くん
いつにもまして、よく分からないやつだなぁなんて思った
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END



