「私ね修斗、働き始めてから、何回も仕事辞めたいって思ったことある。仕事から逃げるみたいに、修斗と結婚して専業主婦になれたらって思ったこともある。でも保育園に移ってから、ちょっとだけどほんのちょっぴしだけど、仕事って楽しいって思えるようになった」


「うん」


「でも修斗がドイツに来て欲しいって言ってくれるなら、私は修斗についていきたい。修斗が向こうでサッカー頑張ってる間、私もこっちで仕事頑張る。ちゃんとやり通して、修斗について行く」


「ありがとな、里穂」


修斗の顔がゆっくりと近づいてきて、そっと唇が触れ合う。


「行く前に、仕事をしてる里穂の笑顔が見れてよかった。今日会って変な顔してたら、無理にでも連れてこうかと思ったし」


「変な顔って……。でも、連れてってくれてもいいんだよ?私は今すぐにでも」


「バーカ。そんなこと言ったって、里穂は途中で物事を投げ出せないだろ?」


そう言われて、おでこを弾かれる。


「もう、痛いな~」


「そんなわけないだろ?」


全く痛くなかったけど、ちょっと大げさに言ってみる。


そしたら修斗の大きな手が、私のおでこをなでてくれた。


「ねえ、修斗」


「ん?」