「俺、ドイツに移籍が決まった。向こうで、サッカーしてくる」


そして迷いのない、しっかりした声で、私にそう言った。


「いつ行くの?」


「年明けたらすぐ」


「そっか」


こんな風に言われるって思っていたのに、「おめでとう」とか「よかったね」とかそんな言葉は私の口から一切出てこなかった。


「里穂?」


そんな私を、心配そうに見つめる修斗。


「ドイツは遠いよ、修斗」


こぼれそうになる涙を見られたくなくて、修斗に思いっきり抱きつく。


「ごめん、里穂」


そう言ってギュッと、私を抱きしめてくれる。


「謝らないで。修斗はなんにも悪くない」


「ん」


私の言葉に短く返事をしたあと、そっと私の頭をなでてくれた。