正直、社会人1年目の昨年は、何度も仕事を辞めたいって思った。


調理現場に立っても、料理の種類を知らなすぎて役に立たないし、管理栄養士の仕事に移ってからも、血液検査のデータをなかなか理解出来なかったり薬の種類を知らなかったりして、ドクターやナースの話についていけなかったり。


大学で一生懸命勉強したつもりだったけど、実際現場に立つと出来ないことだらけで落ち込んた。


それでもなんとか1年やってこれたのは、同じ栄養課で働く人たちみんながいい人だったから。


特に同い年の麻衣子(まいこ)ちゃんと、栄養課のトップに立つ池谷さんにはすごく助けられた。


麻衣子ちゃんは短大を出て、ここで栄養士として働いている。


同い年だけど社会人経験は私より先輩の、クリッとした目が印象的なかわいい子。


池谷さんは栄養課の科長でこの道20年のベテラン管理栄養士で、スラッとした細身の体でパンススタイルが似合う美人さん。


私が管理栄養士の仕事を始めたときから今現在も、ずっと一緒について回らせてもらって勉強させてもらっている。


昨年栄養課に入社したのは私だけで、今年も新しい人が入ってくる予定はないから、私が一番の下っ端になる。


「里穂ちゃん、おはよ~」


「おはようございます」


席についてパソコンの電源を入れていると、今来たばかりの池谷さんが私の隣の席に着いた。


栄養課のトップに立つ池谷さんだけど、とってもフレンドリーに誰とでも話す。


トップに立つ人が堅苦しい感じじゃないから、この場も和やかな雰囲気になっているんだと思う。