「里穂ちゃん、なんだか朝から幸せそうな顔してるね」


「えっ?そうですか」


頬を抑えつつ、パソコンの電源を入れる。


「何かいいことあったの?」


「いいことっていうか、久しぶりに彼氏と会えたので」


「そっか、幸せだね~」


私と会話をしながらも、パソコンの画面に出ている血液検査のデータからは目を離さない池谷さん。


「私なんて、結婚して10年以上たつから、もうドキドキなんてしなくなっちゃった。今は、子供が中心の生活だもん」


「えーでも、私は結婚憧れます」


「麻衣子ちゃんも結婚するもんね。里穂ちゃんは、まだしないわよね?」


池谷さんがクルッと椅子を回して、私を見る。


「まだ予定はないです」


「よかった。まだ里穂ちゃんは結婚しないでね」


「えー何ですか、それ」


そう言って文句を言うと、池谷さんは笑いながら「ごめん」と言ってまたパソコンの方に向き直った。