「凱斗(かいと)、果穂(かほ)、支度できた~?」


子供たちが生まれて7年、私たちがドイツに渡って10年がたった。


あのとき生まれた子供たちには、男の子に凱斗、女の子に果穂と名付けた。


子供たちが1歳を過ぎたころ、私たちはドイツに渡った。


親たちはもっと子供が大きくなったら連れて行きなさいって言ったけど、子供たちが小さなころから親子そろって生活したかったこと、サッカーをしてる修斗の姿を見せたかったこと、少しでも海外での生活をさせたかったことがあって、不安もある中飛び出した。


小さな子供たちを連れての海外の生活は、いろいろ大変だった。


それでも乗り越えられたのは、忙しくても修斗が出来るだけ私たちの傍にいてくれたから。


怪我後の修斗は、最初こそ先発で試合に出れなかったけど、徐々に試合に出れる時間が長くなって、ウィンターブレークに入る前の試合には、先発で出れるようになった。


そして数年前から、ボアシルでキャプテンを務め、必要不可欠な選手になっている。


「お母さん、出来た!」


「おっ、凱斗早いね~果穂は?」


「まだ~果穂はいつも遅い」


「しょうがないよ、女の子だもん。凱斗より支度に時間がかかるのよ」


凱斗とリビングで話していると、子供部屋からバタバタと走ってくる音が聞こえてきた。


「あっ、果穂かな?」