「ありがとな、里穂」


「こちらこそ。赤ちゃんたち見た?」


「見たよ。すっげえかわいい」


そう言って修斗が頬を緩める。


「ふふっ。なんか修斗、子供たちにデレデレになりそうだね。特に女の子」


「別に。そんなことないだろ」


そうからかうと、恥ずかしいのか、修斗は私から顔をそむけた。


それから1か月後……。


ボールに触れるようになった修斗は、来シーズンに向けてドイツに旅立った。


「絶対レギュラー取るから」


「うん。3人で応援してる。子供たちの写真、毎日送るからね」


「ああ」


飛行機に乗る前の修斗の顔は、夫でもなく父親でもなく、サッカー選手の顔。


怪我を乗り越え、守るべき子供たちが出来た修斗は、また一段と強くなった。


そして私も、修斗の怪我と出産を経験して、妻として母親として、強くなった。