「どうしよ、緊張してきた」


「さっきもリハーサルしたし、大丈夫だろ」


「修斗は緊張しないの?」


「まあ、サッカーするときよりは緊張してる」


そう言って仏頂面で立っている修斗を見て、思わず笑ってしまった。


「なに笑ってんだよ」


「だってサッカーより緊張してるって……」


「一生に一回のことだろ?俺だって少しは緊張するし」


「一生に一回じゃないと困るよ」


私の言葉に、「まあ、そうだよな」と修斗の顔にも笑みが広がった。


長かったようで短かったドイツでの生活1年目を終えた私たちは、数日前に日本に帰国した。


修斗が所属しているボアシルは、シーズンの最後の最後に失速してしまい、結局3位という成績で終わってしまった。


修斗個人としては、二桁得点でチームに貢献したし、ブンデスリーガに本格的に参加した年にしてはいい成績を残せたと、それなりに満足しているみたい。


そしてドイツに渡って1年たった今日、地元のホテルで私たちは結婚式を挙げる。


中学、高校、大学の友達、仕事でお世話になった人たち、修斗が所属していたFCウイングの関係者など、多くの方を招待出来た。