「悪い。待たせたな」


「ううん。修斗、有名人だね」


「別に、そんなことないだろ。サッカー興味ない人は、俺のこと知らないし」


背中を押されて、修斗と二人で歩き出す。


「そういえば、修斗」


「ん?」


「私、今まで一回も修斗にサインもらったことない」


「そうだっけ?」


とぼけた表情をする修斗の背中を、バシンと叩く。


「痛いな」


「ちっとも痛そうな顔してないし」


「まあ、全然痛くなかったけど」


「もう……」


そう言って笑っている修斗の腕に、ギュッと抱きつく。


「あんまりくっつくな」って言いながらも、修斗は無理に私を離そうとはしなかった。