「里穂、早くしないと置いてくぞ」


「ちょっと待って」


玄関から聞こえてくる修斗の声に、2階の自分の部屋から答える。


「忘れ物、ないよね?」


部屋を見回して、鞄の中にパスポートが入っているのを確認する。


「里穂、飛行機は待ってくれないぞ」


「今行く~しばらくこの部屋ともお別れだね」


修斗と一緒に片づけて、すっからかんになったこの部屋。


その部屋にお別れを言って、階段を駆け下りた。


「キャッ!」


「うわっ」


でも慌てて下りたせいか、最後の一段を踏み外してしまう。


「あれ?痛くない」


なかなか襲ってこない痛みを不思議に思って顔を上げると、修斗が私を抱きしめてくれていた。


「たく、遅いから呼びに行こうと思えば、階段踏み外すとかありえないだろ」