「いってくる」


「いってらっしゃい、修斗。自分らしくね!」


「ああ。精一杯やってくる」


最後に私の髪をなでた修斗は、ドイツ行きの搭乗口に向かった。


半年後、修斗の隣に立っても恥ずかしくない、素敵な女性になっていよう。


修斗の後ろ姿を見送って、私も空港を後にした。


その日のスポーツニュースは、修斗のドイツ行きの話題で持ちきりだった。


インタビュアーの質問に、修斗が答える。


『向こうの環境に早く慣れて、一試合でも多く試合に出れるように頑張ります』


キリッとした表情を見せる修斗に、多くのフラッシュがたかれる。


「私も頑張るよ、修斗」


今日この日、修斗のサッカー人生第二の幕が上がった。


きっと今までより厳しい道のりが待っているんだろう。


そんな修斗を支えられるように、今出来ることを精一杯やろう。


そう誓って、もらった指輪にそっとキスを落とした。