「へえ。そっか! わかった!

ビーナスと仲良くすりゃいいんだな?」

「とりあえずは。

幸い、この国はビーナス…女性の生存率 が高いようです。

すぐにでも、うまくいきますよ」

「よし! じゃあ、さっさと女性っての を探して、国に戻るぞ!」

エルクは気合いを入れ、勢いづいた気持 ちのままにベンチから立ち上がった。

すると、立ちくらみを起こし、上体から 地面に倒れこんでしまう。

地にこすられた彼の右半身に、砂利がつ き、砂けむりが舞う。

「なんだよ、これ……。

体に力が入らねぇ……」

普段なら、この程度の動作で貧血を起こ したりはしない。

むしろ、エルクは体力と運動神経に自信 がある方だ。

国で行われる乗馬大会や弓道選手権で も、よく優勝していた。

どれも、趣味でやっている。

王子として勉強せねばならぬゆえ、練習 に時間を費やすほどの自由がないから だ。


病気とは無縁だった健康優良児。

エルクが倒れ、青乃臣は彼のそばにかけ よった。

「エルク様!

大丈夫ですか!?」

「ああ……。

でも、体が重い……。

なんなんだこれ。

まるで、体に鉄の鎧(よろい)でもつけ てるみたいだ……」