ここに足を踏み入れるのは何年ぶりだろうか。
こげ茶色の絨毯(じゅうたん)をじわりじわり と踏みしめ、未来は窓辺の本棚に近づいた。
この本棚には、昔、稔に読み聞かせてもらった 童話やファンタジー小説がぎっしり詰まってい る。
「たしか、この辺にあるはず……」
つぶやき、未来は一冊の本を引き抜いた。
古びたファンタジー小説。
稔が学生時代に購入したと言っていたから、そ うとう昔の作品である。
すでに絶版となっている、海外作家が書いた日 本語訳バージョンだった。
「これだ。ヴァンパイアの物語……」
書庫中央に位置するテーブル席に座り、未来は ページを繰(く)った。
指先にホコリっぽい感触。
古びた紙のにおいがする。


