ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐


「ええ、そう伺っています。

書店の仕事をお手伝いした時、そういっ たお話を稔様から聞かせていただきまし た」

青乃臣が穏やかに言ってみせる。

堅かった表情を和らげ、未来は幼少時の 思い出を語った。

「ウチは、見ての通り裕福な家。

親が家にいなくたって、食事には困らな かった。

お金はあったし、昔はよく、おじいちゃ んが私の面倒見にきてくれてたしね。


お歳暮やお中元とかが毎年届くんだけ ど、そういう物は大半食品。

缶詰やジュース、海苔(のり)とか、 ビーフシチューとか、いろいろ。


……でも、私、おじいちゃんの畑でとれ た柿やミカンがいちばん好きだったの。

おじいちゃんに『栄養が偏る』って止め られても、秋や冬には1日3食、柿ばか り食べてた。

収穫中は、おじいちゃんについて畑を 回ったよ。

傷がついた不良品は出荷できないから、 その場でおじいちゃんが皮をむいて食べ させてくれたんだよね。


それを作文に書いたら、みんなに大爆笑 されたの。

……なんでか分かる?」

エルクは不思議そうな顔で、

「さぁ、分かんねぇな。

好きなモン書けって言われたら、普通に そう書くだろ」

「ここが、日本だからだよ」

未来はあきらめたようにため息をつき、

「『みんなが右に行くなら、自分も右に 行け』

これが、日本人の集団心理なの」