「なーんだ、ウソかよっ。
お前、悪いコだな」
非難まじりに返しつつ、エルクは内心 ホッとしていた。
未来に好きな人がいないと知って、なぜ 幸せを感じるのかは、疑問。
同時に、こんな質問が飛び出した。
「じゃあ、何でわざわざ、学校で好きな ヤツがいるフリしてんだよ」
「そういうとこなの、学校は」
未来はげんなりした表情で、日頃の不満 を雰囲気ににじませつつ回答する。
「小学生の時、私はリアルな厳しさって のを肌身に感じたの」
青乃臣とエルクは、興味津々に彼女を見 つめる。
「……小3の時だった。
国語の授業で、好きな食べ物について作 文を書く時間があったの。
おじいちゃんね、今は本屋やってるけ ど、昔はたくさん畑持ってて、柿とかみ かん作って出荷してたんだよ。
アンタ達がおじいちゃんに声かけられた 公園。
昔は、あの辺り一帯に、おじいちゃんの 柿畑が広がってたんだから」


