ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐


「でもね、私も、好きで給食しか食べな かったわけじゃないんだよ?」

青乃臣の意見に納得しつつ、未来は、給 食オンリー生活に徹した理由を話した。

「仕方ないとは思うけど、どこに行って も似たような味。

刺激を求めてコンビニやカフェにも行っ てみたけど、弁当にしろ出来立てのシャ レた料理にしろ、なんだかそっけない味 なんだよね。三口食べたら飽きがくるっ ていうか……。

惣菜の麺(めん)類なんて完全に麺が伸 びてるし、食感なんてあったもんじゃな い。

ほうれん草のおひたしやみそ汁だって、 既製(きせい)品って丸分かりの、型に ハマった味でしかなくて」

そこでいったん深呼吸をすると、選挙の 演説をする中年男性のように前屈みにな り、やや熱のこもった口調で、

「そもそも、私は他人が大勢いる場所で 食事をするのが苦手なの。

大多数の人は、逆の思考を持ってるんだ ろうね。自分以外の人間と会話を楽しみ ながら食事をしたがる、だからカフェや ファミレスにはあんなに人が集まってく る。

それはわかってる。

でも、私は違うの。

ひとり静かに、誰の気配にも邪魔され ず、他人の話し声を気にせず、自分が口 にしている料理の味に集中したいの。

外だと、それは無理。

周りの音やタバコのにおい、子供の甲高 い笑い声とか、気になって仕方なくて、 どれだけ食べても食べた気がしないの。

味に集中する前に、あの圧迫感ある空間 から逃げ出したくなる。

だったらもう、めんどくさいから給食だ けでいいやって」

家中のゴミを粗大ごみとして一気に片付 けてしまったかのように、未来は言葉を 吐き出した。