「何だ? これ」と、首をかしげるエル ク。

「親切に、稔様が譲って下さったのです よ。しかも、最新刊です」

「おじいちゃんが……?」

青乃臣がエルクに向けて掲げた料理本 と、自分の箸でつまんだ竜田揚げを交互 に見て、未来は尋ねた。

「それって、おじいちゃんの店にあった やつ?」

「はい、先日入荷したとおっしゃってい ました。

女性だけでなく、最近では男性の方に も、料理は人気みたいですね」

「ふーん。そうなんだ。私は、家庭科の 授業以外で料理なんてやったことないけ ど。やりたいとも思わないし」

「自分で作らないんなら、未来は今ま で、何食ってたんだよ。

俺様が来る前まで、一人で暮らしてたん だろ?」

疑問と好奇心を足して2で割ったような 表情で、エルクが突っ込む。

「んー、ほとんど家では食べたことな い。給食だけで充分だしね。

コンビニとか行くのもダルイし」

どうしても空腹を我慢できない夜は、 ネットカフェで時間をつぶしがてら夕食 を取っていた未来。

ネットカフェには個室があり、交流嫌い な未来もリラックスできるのである。

もちろん、朝食抜きの習慣は彼女にとっ て慣れた日常の一部となっていた。