ドーナツがみんなの心理的距離を縮めた 日。

未来とエルクは、二人そろって食卓につ き、青乃臣の手料理を食べていた。

「おいしい……!なにこれ……!」

揚げ物料理を一口食べて、未来は目を輝 かせた。サクサクの衣。

「そちらは、若鶏の竜田揚げでございま す」

答える青乃臣に、エルクが顔を向け、

「昨日もお前の作ったモン食べといてな んだけど、ジョーって、ドーナツだけ じゃなくて料理も作れるんだな。お前に そんなスキルがあるなんて、全然知らな かったぜ。

城にいたころは、住み込みのコック達が みんなの飯作ってたし……」

「そうですね。私は、料理担当ではあり ませんでした」

「だよな。

しかも、『竜田揚げ』だっけ?

こんなの初めて食った。

あっちでは見たこともない」

「ええ。こちらを見ながら作ったので す」

青乃臣は席を立ち、ダイニングの棚にし まっておいた料理本をエルクに見せた。