「そんなこと知るか」と言うように、エ ルクは堂々と立ち尽くす。
「自慢じゃないが、俺様は、大皿3枚分 のから揚げを平らげても、30分で腹が 減る男……!
ドーナツなんかで満腹になる弱っちぃ男 じゃねぇっ」
青乃臣は困った笑みを浮かべ、
「エルク様は育ち盛りなので、食欲旺盛 なのは仕方のないことかもしれません が……。
こちらに来てから、少々、王子としての 品性が欠けていますよ」
「いいじゃねぇか。こっちにいる間くら い、城独自のガッチガチな規則なんて忘 れちゃおうぜっ」
「そうですね、それも楽しいかもしれま せんね」
青乃臣は幸せそうに微笑む。
エルクのそばで二人のやり取りを見てい た未来も、彼らの雰囲気につられて笑っ ていた。
“おいしいものは、人の気持ちを和ませ る……。やはり、未来さまはドーナツが お好きだったようですね。
《ソウルメイトは食の好みが似通ってい る》という言い伝えは、本当でした”
ようやく普通に会話を交わせるように なったエルクと未来を見つめ、青乃臣は 内心ホッとした。


