青乃臣は眠るエルクを横抱きにし、 彼の部屋まで移動した。

魔術師として高い能力を持つ青乃臣 ならば魔術を使って人の体を浮か せ、自らが楽することも可能なのだ が、エルクに対してそんなことをし たくない。

エルクをベッドに寝かせると、彼が 購入したマグカップを洗うため、青 乃臣はダイニングに戻った。


“国王様がラークリマを持って逃亡 してしまい、一時期はどうなること かと心配しましたが……。

思い切ってこの惑星に来てみてよ かったです。

あれこれ文句を言いつつも、エルク 様はどことなく幸せそうですし、城 にいた頃より生き生きしています。

未来様も、いつかエルク様と打ち解 けて下さると良いのですが……”


エルクにヴァンパイアの能力が目覚 めてしまったこと。

ラークリマ入手への道。

問題は山積みだけれど、何とかなり そうな気がする。

3人おそろいのマグカップを手に取 り、青乃臣は明るい未来を予想して いた。


「さーて。食事の支度をしましょう か」

稔にもらったエプロンを身につけ、 青乃臣はやや早い夕食の準備にとり かかった。