無事マグカップを購入し、二人は包里邸 に戻った。

玄関に入るなり、エルクはマグカップの 入った紙袋を頭上に掲げ、テンション高 く言った。

「未来、喜ぶといいな!

割れたマグカップの代わりにはならない かもしんねぇけどっ」

今日エルクが買ったマグカップは、全部 で3つ。

未来の分だけではなく、青乃臣と自分の 分も購入したのである。


リビングに入ると、エルクは宝物を扱う ような手つきで、3つのマグカップをガ ラス製のテーブルに並べた。

青乃臣は優しい笑みを浮かべ、

「ええ。未来様も、きっとお喜びになり ますよ」

「だよな!?

ツンツンしてつまんなさそうなあの顔 を、俺様がいつか笑わせてやるぜっ…!

あうっ…………!」

興奮しすぎたせいなのか。

エルクは立ちくらみを起こし、そばにあ るソファーへうつぶせに倒れ込んだ。

「エルク様……!」

青乃臣は青ざめ、エルクに寄り添う。

「体に力が入らない……」


ついさっきまで雨に濡れていた灰色の空 に、綺麗な虹がかかっている。

雲の隙間から、太陽の光がさしはじめ た。

太陽が空を明るくするにつれて、エルク の体によみがえったヴァンパイア質は活 性化してしまう。


「雨がやんでしまったようですね。

人の血を飲めば、多少楽になるのです が……。

未来様の元でお世話になる以上、近隣住 民の方々の血をいただいて、迷惑をかけ るわけにはいきませんし……」

「大丈夫大丈夫!ちょっと、はしゃぎす ぎただけ。

夜になればおさまるし、このまま寝る わ」

エルクは瞳を閉じて、眠りについた。