国民に、どこまでわかってもらえただろうか。
エルクは一抹(いちまつ)の不安を覚えたが、 青乃臣が見事にそれを吹き払った。
「エルク様、とても素晴らしかったですよ。
最初は反対意見も目立つかもしれませんが、物 事が大きな動きを見せる時は、全体的に抵抗も 大きくなるものです。
大丈夫。時間が経てば、理解者も増えますよ、 きっと」
青乃臣の微笑フェイスを見て、エルクの緊張状 態は雪崩(なだれ)のようにドッと崩れた。
「まさか、俺様がソウルメイト探索禁止法を廃 止することになるなんて、自分でも意外過ぎて ビックリだし、国民なんてもっと驚いてんだろ なー。はあぁ……」
力なくため息をつき、エルクは言った。
「しかし、これからが大変だよな。
問い合せの電話も殺到するだろうし、ソウルメ イト探索魔術を嫌がる奴らがストライキを起こ すかもしんねぇし……。
魔術も習得しなきゃなんねぇし、こんなことな ら、いざって時に備えて剣術くらい真面目にや っとくんだった。
俺様も、見事に平和ボケしてたんだな」
「大丈夫ですよ、エルク様なら。
上級魔術師でいらっしゃるカンタスターレ様の 血を引いてみえるのですから、練習を積めば、 私の能力など軽々と越されるのではないでしょ うか」
「だといいんだけどなぁ。
にしても、ヴァンパイア体質も、こっちにきて 完全に治まったみたいだな。貧血で倒れてた日 本での毎日がウソみたいだぜ。
お前の魔術ドリンクを飲むまでもなかったな」
エルクは、やや残念そうに自分の体を見た。
「そうですね。それはきっと、カンタスターレ 様がみえた後に、樹里様のために作った魔術飴 をエルク様がご試食されたからでしょう」
帰還する前、エルクは、青乃臣が作った魔術製 の飴をつまみ食いしていたのである。その前に 、カンタスターレの訪問によってヴァンパイア 体質が治まっていたという影響も大きい。
エルクは、自分の体質が元に戻ったことを実感 しつつ、城内の石製階段を登った。
「樹里の肩、確実に治るな!」
元気に言いつつ、エルクは切なくなった。
今ごろ未来は、青乃臣の作った特殊な飴を樹里 に渡しているだろうか……。
「未来のやつ、俺様のこと忘れてたりして!
いなくなってせいせいする、とか言ってさ」
寂しさを紛らわすべく、世間話をするノリでエ ルクはそんなことをつぶやいた。


