突然のことに呆然となりながらも、未来は、何 が起きているのかを把握していた。

「アムド城に帰ったの……?」

怒りではないけれど、それに近い驚き。激しい 動揺。

「まだ、私の中のラークリマは育ちきってない じゃん…!

なのに、何で勝手に帰るわけ!?」

眉間にシワを寄せ、置き手紙か何かがないか、 屋敷中を探して回った。しかし、それらしい物 は一切見つからず、未来は落胆した。

「なんなの、あいつら……。

勝手に居候しに来たと思ったら、人の許可なく 勝手に帰って…!

もしまた顔出したら、一発殴ってやる!」

そう言いつつ、彼らとは二度と会えないのだと 分かっている。強い口調とは裏腹に、未来の両 腕は震えていた。

むしゃくしゃした気持ちのままダイニングに戻 り、いつもの席に座る。

なんだか温かい気のするクロワッサンは、当然 のように冷たくて、焼いてから時間が経ってい るのだと分かった。

「これが、置き土産ってわけ?」

クロワッサンを一口かじると、頬に涙がこぼれ た。

寂しい。彼らに会いたい。

「なんで、何も言わずに帰るかなぁ……。

ほんと、非常識! 馬鹿!

異世界人なんか大嫌い!」

涙をこらえるべく、未来はエルク達に対する憎 まれ口を叩いてみたが、込み上げる感情は膨ら むばかりだ。

「ラークリマ探しは……。私のことは必要無く なったの……?」