こうして起きていられるのは、カンタスターレ がここに来たから。
今、カンタスターレがこの場に居なくとも、彼 の持つラークリマのエネルギーは、およそ半径 10万キロメートルまで拡散する計算だ。
本来あるべきアムド城の台座から離れてクロロ プラスト王国に悪影響を与えているのは確かだ が、地球にある以上、ラークリマの魔力はここ でも強力に発揮される。
当然、エルクにもそれが分かっていたが、未来 に別れを告げる勇気の無い彼にとって、カンタ スターレ来訪の経緯やラークリマの件について 説明するのは酷な話だった。
「私が魔術師であることを、未来様もご存知で すよね」
汗だくになるエルクの横で、青乃臣が助け船を 出した。
「うん、知ってるけど」
未来は、青乃臣の魔術で空間転移をした時のこ とを思い出し、うなずいた。
「魔術には様々な用途や術式があるのですが、 中には、魔術ドリンクを作れる魔術師もいるの です。
私もそのうちの一人なのです。アムド城ではよ く、木の実や果物を魔術で合成し、薬やサプリ メントを作っていたのですよ。
今回、魔術を使えるまでに体力も回復したので 、エルク様のヴァンパイア体質を軽減するため の魔術ドリンクを作り、飲んでいただきました 。
エルク様も、せっかくのゴールデンウィークに 動けないのは不便だと、前々からおっしゃって いたので」
「すごい…! そんなこともできるんだ、魔術 師って。
絵本に出てくる魔法使いみたいだね」
青乃臣が話を変えてくれて助かった、と、エル クはホッとしたが、そこには、未来との時間が 過ぎ去ることへの苦い気持ちも混じっていた。
身長が伸びるドリンクとかも作れる? 頼んで みようかな。未来は魔術の力に感心しつつ頭の 隅でそんなことを考えた。
青乃臣が心配そうに、
「さきほどのお話に戻させていただきますが、 未来様のご友人が肩を痛めていると言ってみえ ましたね。そんなにひどい症状なのですか?
部活動をお休みされるほどだとお聞きし、少々 気になりまして…」


