あまりに必死なエルクを見て、未来は圧倒され てしまった。
やはり、エルクの様子はいつもと違う。未来は 思った。
“こいつらしいバカっぽさが、全然ない”
真剣に訴える時も、彼の言動はどこかズレてい るのに、今日はそういう雰囲気が見当たらなか った。
「それでは、まず、材料を切りましょうか」
青乃臣の一声で、固まっていた二人は弾かれた ように動き出した。
お好み焼きは、クロロプラスト王国にはなかっ た。あくまで、日本で親しまれている食べ物で ある。
にも関わらず、青乃臣は、未来以上に手際よく 下準備を進めていた。
未来は感心したように青乃臣の混ぜているボウ ルの中のタネを見て、
「私も、昔はよくおじいちゃんと一緒に作って たけど、さすがにそんなに早く作れなかったよ 。さすがだね」
一方、準備段階で失敗ばかりしていたエルクは 、執事を誉める未来を見てヤキモチをやいてい た。顔を真っ赤にし、むくれている。
「お褒めにあずかり、光栄です。
エルク様がご機嫌ナナメになっています。未来 様、エルク様のお手伝いをお願いできますか? 」
エルクの心情を見透かしたのか、青乃臣は肩を すくめて俺様主を見やった。
スマートとは程遠いエルクの手つき。
お好み焼きに乗せるための卵を用意しているの だが、うまく殻を割れず、悪戦苦闘中である。
「ちょっ…! そのまま入れたら、お好み焼き がジャリジャリする! かして!」
エルクの割った生卵には、見事なまでに細かい 殻のカケラが乱入していた。
未来は眉間にシワを寄せ、エルクのとは違うボ ウルに卵を割り入れ、苦い思い出を語る。
「小学生の頃、給食に出た卵スープに、殻が入 ってたの。そうとは思わず無防備に口にした。
それ以来、私は卵が苦手なの。味は好きなんだ けど、正直、お好み焼き作るのも気が進まない 。
でも、あんたたちと一緒に作れば苦手意識もな くなるかなって賭けてる。
だから、気合い入れて取りかかってよね!」
片目をつむって、意地悪な笑みを作る未来。
「わっ、わかったって! 俺様に不可能なんて ないしな!」
「もちろんです。おいしいお好み焼きを作りま しょう」
エルクと青乃臣が元気に声を合わせたのは同時 だった。


