未来は何も言わず、エルクの話を聞くことにし た。
「こうなるまで、王子を辞めたいって思ってた からな。俺様は……」
エルクは胸の内を語った。
「毎日毎日、自分のことで精一杯だったんだよ 。
物心ついた時には王子って呼ばれてて、来る日 も来る日も、歴史や経済の勉強ばっかりさせら れてた。
昔はそれが普通の生活だって思ってたし、特に 不満もなかった。
……でも、10歳の誕生日を迎えた日、俺様は 知ったんだ。
パーティーに向かうため、馬車に乗せられて、 初めて城の外へ出た。
城壁を後にすると、想像を超える光景が広がっ てた。
市場や競技場……。城下街には、数え切れない ほどたくさんの人がいた。
晩ご飯の買い物をする主婦や、宿に泊まる旅人 達。
外国人とやり取りしてる交易商人。
俺様とそう歳の変わらないヤツらが、友達と遊 んでたりして。
その時、思ったんだ。
俺様の日常は、限られた狭い空間の中にしかな かったんだって。
俺様の知らない場所で、国民達は自由に生きて 、みんな、好きなことをして暮らしてる。
好きな服を来て、
好きな場所へ遊びに行って、
好きな仕事をして、
好きな人との会話を楽しんで……」


