未来に渡された傘を広げ、エルクは空を見上げ た。
「いつもみたいに眠気がこないのはいいことだ けど、俺様、なんだか雨は苦手だなぁ……」
「まあ、わからなくもないけど」
未来も傘を広げ、エルクより先に歩き出した。
「雨は、大地に恵みを与えてくれるの。
降りすぎも良くないけど、植物や人間にとって は大事な栄養なんだから」
「栄養、か」
つぶやき、エルクは未来を追いかけた。
パシャパシャと、水たまりを踏みつける音が響 いた。
二人分の足跡が、雨水に沈んだ土に浮かんで、 じきに消える。
雨は、大地に降り注ぐ栄養。
そう思ったら、エルクの気分も変わった。
「そうだよな! 人間と同じように、大地にも 栄養が必要だよな。
そう思ったら、雨もうるわしいものに見えてき たぜ。
城にいたころは、大地の栄養なんて考えたこと なかったし。
いかに、ラークリマの魔力に助けられていたの かが思い知らされるな」
エルクは改めて、自国の豊かさを振り返った。
ラークリマが持ち逃げされる前までは、平和で 恵まれた国だった。


