「ジョーはホンット、本読むの好きだなー」
エルクは何の気無しに、一番上に積んである一 冊を手に取った。
それは、子供向けに描かれた絵本。
主人公の一般人少女が王子様と恋におちる物語 だった。
1ページあたりの文字数が少なく短い話だった ので、普段本を読まないエルクも数分で読み終 えることができた。
絵本を閉じ、エルクは感想めいた胸の内を語る 。
「……ジョーが本にハマるの、分かる気がする 。
一瞬で別世界に行って、違う人生を擬似(ぎじ )体験できるし。
でもなんか、変な感じだな……。
同じ身分だってのに、本の中の王子と実際の俺 様はだいぶ違う。
俺様の日常と言ったら、城の人間に監視されな がら部屋で勉強したり、外出先は決まってパー ティー会場。
出会いと言えば、他国の姫だけ。
そいつらと踊って、テキトーに飯食うだけ。
本の中みたいにスリリングで楽しい毎日とは無 縁の世界に、俺様は生きてる」
「そうですね。お気持ち、深くお察しします」
青乃臣はエルクの隣に座った。
「エルク様はこれまで、国のためによく頑張っ てこられました。
こうして生きてみえるだけで、すでに尊い方な のですよ。
こちらに滞在している間、エルク様は楽しそう にしてみえる。
やや品性が欠けつつあるのは問題ですが、私は 、エルク様が楽しそうにしてみえるお姿を見れ てとても嬉しいですよ」


