「そんな、めっそうもございません!」
青乃臣はあわてふためき、冷蔵庫から玉ネギを 2つ取り出した。
「では、こちらを切っていただいてもよろしい ですか?」
「任せて! 切るだけでしょ?」
青乃臣に教わり、未来は玉ネギを切った。
皮のむき方や包丁の持ち方を知らなかった彼女 は、あくせくしながら目の前のことをこなして ゆく。
洗い終わった玉ネギに包丁の刃を滑りこませる と、未来の両目には瞬く間に涙が浮かんだ。
「目ェ痛いっ。
なんなのこれ!
不良品なんじゃない!?」
玉ネギカット中に涙する未来は、そんなことを 言って青乃臣を笑わせた。
「あははは。不良品ではございませんよ」
青乃臣は未来から包丁と玉ネギをあずかり、手 早く千切りにした。
「すみません、水につけてから切るべきでした ね。
催涙(さいるい)物質は水にとけ出すので。
玉ネギを切ると催涙物質が空気中に放出され、 目の粘膜を刺激してしまうのです」
「今さら言われても遅いっ!」
「うっかりしていました」


