「ヴァンパイアは、人間よりデリケート な生き物です。

国王様が逃亡する前…ラークリマが城に あった頃は、ヴァンパイア反応を抑える 魔術ドリンクを作ることができました」

「そういえばジョーは、城にいた頃、魔 術でいろんな薬作ってたな。

伝説の魔女の真似事だとか言って」

「ええ。いにしえの時代、魔女はその能 力により、様々な魔法薬を調合したと言 われています。

それに比べれば、私の作る物なんて、程 度が知れています。

……ですが、ラークリマを持ち出されて しまったことにより、魔術ドリンクす ら、作ることが不可能になってしまった のです」

「親父のせいかよ」

エルクは舌打ちをする。

「ヴァンパイアにならずに済む方法なん て、あったんだな。

でも、ラークリマがなければそれも無 理。

一生、こんな体で生きてくのか、俺様 は……」

エルクは哀愁(あいしゅう)を漂わせ、 ため息をつく。

「人の血なんて、どっからどう見てもお いしくないじゃん……」

「そこは安心して下さい。

ラークリマを見つけられさえすれば、全 て解決します」

「やっぱりそこか。

……ん!? ラークリマで解決すんの?

ヴァンパイア反応って、一度出たら、元 の体には戻れないんじゃ……?」

「エルク様の場合、異空間に来る途中、 様々な電波や空間の歪みに当てられ、 ヴァンパイア反応が出ました。

おそらく、遠い昔、エルク様の血筋に ヴァンパイアの方がみえたのでしょう、 その影響だと思われます。

すなわち、エルク様のご先祖様がヴァン パイア、ということになります。

ですが、エルク様自身が受け継いだ血は 人間質が濃く、ヴァンパイア質はほとん どありませんから、ラークリマの魔力を 浴びた魔術ドリンクを飲めば、今の体質 はおさまります」