「もしかしたら……!

エルク様の血液に、ヴァンパイア反応が 表れた可能性があります」

エルクの背中をさする青乃臣の言葉は、 深刻だった。

「ヴァンパイア……!?

それって、太陽が苦手な生き物のことだ ろ?」

エルクは、弱々しくも冗談めかした口調 で、

「俺様は、太陽の光で輝きを増す男だ ぜ?

ジョーの意見には感心するけど、ヴァン パイアなんて、なあ……?

血を吸わなきゃならねえ種族なんて、俺 様には心当たりがねぇ……」

言っているそばから、エルクの八重歯が 数ミリ伸びた。

前歯を挟むように生えた、とがった2本 の歯。

それで人の生き血を吸わなければ、ヴァ ンパイアは生きることができないと言わ れている。

「エルク様。冗談を言っている場合では ありません。

現に、天に浮かぶ太陽の光が、現在進行 形でエルク様の体力を奪っているので す。

認めてください」

「認めたいけど、俺様はアムド城の王 子。

正真正銘、人間と人間の間に生まれた男 だぞ?

魔術を使えるお前と違って、変な術なん か使ったことねぇし、もちろん、人の血 だって吸ったことねえ。

なのにヴァンパイア反応が出たとか言わ れても、いきなり過ぎて実感湧かねー よ……」

「いま、そうして力尽きているのが何よ りの証拠ですよ。

夜になるまで、活動はひかえましょう」

「んなこと言ってたら、ラークリマが入 手できねぇ……だろ」

じょじょにかすれていく、エルクの声。

青乃臣は自分の上着を彼の体に羽織ら せ、日差しを和らげようとした。