「当たり前か。自から命を絶とうとしたものが、助けられても嬉しくないはずだ」



男は何もかも見透かすような目で夢乃を見ている。



「・・・・・」



何も言い返せず俯く夢乃。



「何故生き急いだ?」



それは静かだが、よく通る声だった。



その声は夢乃の心の奥底にズンと響いてくる。



男からしたら、たまたま何か面白い事はないかと地上に遊びに来てみた所、ちょうど夢乃が飛び降りる所に遭遇しただけで、今の質問にも特に意味はなかった。



悪魔と言っても、死神と違い誰かの命を持っていっても昇給するわけではない。



むしろ生きていないと意味がないのだ。



ただ・・・夢乃の目に引きつけられたのかもしれない。




絶望と言うより・・・生きたいのに、生きる場所がない。



そんな目をしていた。