どこをどう走ってそこにたどり着いたかは覚えていない。


気付けば夢乃はいつも来る廃墟ビルの屋上に来ていた。



夢乃が生まれた頃から続く不況のせいか、今夢乃の暮らす街には作りかけで止められたままの場所が多い。

ここもその一つだった。


自分を傷つけるものは何もないこの場所。


夢乃が落ち着く事のできる唯一の場所である。



「なんで私ばかり・・・・」



思わず口から思いが漏れる。


イジメが始まった理由は本当に些細な事からだった。


高校に入り仲良くなった友達が、目立つグループから嫌われ、その子達からあいつシカトしようと言うのを夢乃が断ったから。


ただそれだけ。



けれどそれが彼女たちには気に入らなかった。



それから夢乃の地獄の日々は始まった。