ドアの向こう

「ちょっと待ってよ。斎藤ちゃん。」

ドアを開けようとした腕が捕まる。

「脅かしてごめんね。ただ、ちょっと抑えが効かなかっただけだから。」

「わかりました!大丈夫です!わかりましたから、放してください!」

腕を振りほどこうとする。

「ごめんって。大丈夫だよ。俺、君の事気になっててさ。付き合わない?」

話が支離滅裂だ。
見た目以上に酔っ払ってるんだ。

「ねー。だめかな?」

「いや、ちょっと。酔ってますよ。もう帰りましょう。」

「いーじゃん。会社に泊まっちゃおう!」

訳わからない事を言いながら、
私をドアに追い詰めてくる。

「田中さん、近いですよ。とりあえず一旦外出て酔いをさましましょう。」

田中さんとの距離は二センチ程しかない。

その時私の顔のすぐ横へ両手を、バン!と思い切りついた。

鉄の扉の鈍い音がビルに響き渡る。

冷や汗が流れる。

「キスしよーよ。そしたらドア開けてあげる。」

またしても鳥肌がたつ。

「何言ってるんですか…!酔ってますよ。落ち着いて一旦外に出ましょう。」

「いーじゃん。減るもんじゃなし…」

急に色気のある声で囁いて
グッと距離を縮めてくる。

「いや…ちょっと待ってください!」

「待たないよー。こっち向いて。」

顎を持たれ
無理矢理、顔をむかされる。

「や…!!」