ドアの向こう

戻ってみるとすでに他の社員は全員帰っており、真っ暗だった。

「田中さん、すいません。ちょっと待っててください。」

そう言って自分の席まで行った。

が、机の上に携帯は無かった。

「あれ?!すいません。ちょっと見つからないんで、探してそのまま家に帰るんで、田中さんだけ飲みに戻ってください。」

「えー?携帯ないの?俺が携帯鳴らしてあげるよ~。番号言って。」

「あ、すいません。090ー○○○○ー****です。」

「おっけー☆」

そう言って携帯を鳴らしてくれた。

ブー。ブー。

近くでバイブが鳴る。

と言うか、彼のポケットのあたりで…。

「じゃーん☆」

田中さんが得意げにポケットから私の携帯を出して見せた。

「電話番号ゲット!斎藤さんが教えてくれないのがわるいんだよ。」

そう言って私へと携帯を差し出した。


一瞬何が起きたか理解出来ず固まる。

「え…ちょっと。こーゆー事、二度としないでくださいね。早く戻りましょう。」

とりあえず、携帯があったので安堵し
その場を後にしようとした。

「ねー。斎藤ちゃん。」

お酒の匂いがすぐ後ろからして、
直後、後ろから抱きしめられた。

「え?!なんですか?!」

動揺しながらその手を振りほどこうとするが、かなりの力で抱きしめてきて、身動きがとれない。

冷や汗が出た。

こんな時間に電気もついていない、
誰もいない会社に2人きり。

「ねー。斎藤ちゃんは彼氏いるの?」

鳥肌がたった。

「はなして…!」

強引に腕を振りほどく。
出口に向かう。