そんなある日私に悲劇はやってきた。

すごく晴れた日暇だった私は

『ねぇねぇ翼〜。外行こうよー』

『えー。絶対暑いよ』

『外で寝た方が気持ちいいよー』

『やだよ。1人でいけよ』

私はいじけて翼の寝ている布団の上に飛び乗った。

「やめろ重い!死ぬ!』

『じゃあ外いく?』

『わかったいくいく!』

『じゃあいこー!』

久々の外にルンルンな私は翼の手をひいて裏にはの芝生に寝っころがった。

「ね?気持ちいいでしょー?』

『あぁまぁまぁだな』

『素直じゃないよねー。』

『うるせー。わがままよりましだ』

そんな話をしていた。

『んじゃそろそろ帰るか?』
そう翼がいったとき。



バタッ…


私は倒れてしまった。

すぐに先生に見てもらったあと私は衝撃的なことを聞いてしまった。

悲劇はやってきた。

ままもすぐに駆けつけた。

『お母さん。杏音さんの病気はおもった以上に深刻です。』

『ちょっと待ってください先生!
杏音の前で話すんですか?』

『これからは辛い治療やいろいろな制限がかなります。
まだこどもだといっても知らずにはいれないとおもいます,』

『わかりました』

『杏音ちゃんよーく聞いてね?』

『はい。』

私は息をのんだ。


先生の口からでた言葉はとてつもなかった。

『君は心臓病だ。心筋という心臓を動かす筋肉が弱っている。
このままだと危ない。これから辛い治療が始まるけど先生と一緒に頑張ろう。』

それから先生はママに難しい話をし始めた。
ご飯がどうとか薬がどうとか。


でもわたしの頭にちゃんと入ってきた言葉。

ー心臓病ー

嘘でしょ?私死んじゃうの?

不安を隠しきれない私は一筋の涙を流し病室を飛び出した。

ーどこにいくの?
行く場所なんてない。
逃げ場なんてない。
ここからにげてもきっと病気は追いかけてくる。
でも悲しくて不安でどうしようもなかった。
そんなとき私の頭をよぎったのは

ー翼ー

私は翼の所にいって真っ先に抱きついた。

『つっつばさ〜。あぁ〜タスケてー。』

泣きながら言葉にならない声で翼に何度も叫んだ。

翼はなにもいわずただ私を抱きしめてくれた。
その温もりは私にすごく大きな安心感をくれた。

私はこの優しさに恋をした。

泣き止んだ私に翼は

『きっと君も本当のことを聞いたんだろ?大人は理不尽に貴方はそんなに重い病気じゃないから安心して?なんていってあとあとわかる真実。君もそれを知ってしまったんだろ?
杏音?逃げてもしょうがないんだよ?
大丈夫戦おう?一緒に。
僕がここで待っててあげるから!』

『翼…』

「杏音。今日の夜一緒に屋上に行こう。』

『うん!』

夜になった。

翼と私は屋上に行き寝転がった。

『杏音。星が見えるだろ?でもあの星は何億年も前の光なんだよ。
すごいとおもわない?僕らはそんな昔の星を見ているんだ』

『うん』

あまり実感できないけどすごいとおもった。

『俺も病気なんだ。君と同じように全然大丈夫だよなんて大人にいわれて。
なのに俺は白血病だった。
3年前からここにいる。』

『3年前から?治らないの?』

『わからない。親は全て隠すから。
きっと治らないんだとおもう。親の態度を見てたらわかる。
もう長くないってこと。』

『そんなのわかんないよ!長くないって決めるのはお医者さんじゃないんだよ?
生きる人が終わりを決めたらダメなんだよ!だって…だって翼の心臓動いてるよ?』

私は翼の胸に手を当てそういって。

『杏音は真っ直ぐだね。でも俺決めてることがあるんだ。』

『なに?』

『恋はしない。』

その言葉を聞いたときまた私の頬を涙が伝う…

『どうして?』

彼は空を見ながら話した。

『きっと僕は僕がすきになった人よりも先になくなってしまう。これは自分で終わりを決めたわけじゃない。それは確かなんだ。
だから自分のすきな人をかなしましたくない。
後悔して欲しくない。
僕だってきっとすきな人がいたら心の底から死ぬことを恐れ死にたくないと強く想うだろう。
そうなりたくないから。』

かれは今までにないくらい悲しい横顔でそういった。

『じゃあさ…』

「ん?』

『私に恋してよ!』

『えっ?』

『私を好きになってよ!私は翼が好きだよ?恋をしないなんて言わないで!
私が翼を守るよ!きっと恋をしなくたって死ぬのは怖いよ!だからもし…もし翼の人生が終わっちゃうその一秒までそばにいるよ?翼が最後まで笑えるくらい!幸せなもの私がいっぱいあげるよ?
なにもないままおわっちゃうなんてもったいないよ!もしかしたら奇跡だってあるかもしれない。何があるかわからないのに何もないって決めつけて終わっちゃうなんておかしいよ!だから。だれにも恋できないなら私にしてよ!』

『杏音』

泣きながら言っている私に翼はそっと涙を拭ってくれた。

私を抱きしめ大好きな温もりで。

私にいってくれた

『俺も杏音が好きだった。杏音の真っ直ぐなとこも意地っ張りなとこもすきだった。
でも好きだって認めたくなかった。怖かったんだ。でも無理だよ…あんなふうに言われたら気持ち抑えらんねーよ。
すきだよ杏音。ありがとな。』

翼は強く強く抱きしめてくれた。
私は負けないくらい強く強く抱きしめ返した。

こうして2人の恋愛は始まった。

このあとに待ち受ける悲しみを知る由もなかった。