一方、人形師の男はと言えば、毎朝枕元に置いてある花の種やら筆やらを不思議に思っていた。ある日、人形師はその正体を確かめるベく、寝たふりをすることにした。
「一体、誰がやってくるのだろう」
人形師の胸は好奇心と少しの恐怖で高鳴っていた。

 午前0時を過ぎた頃、きいきい、という音が扉の隙間から入ってくるのを聞いた。そしてそれは顔のすぐ近くにやってきた。

「あのね・・・今日はみんなで、パンのかけらを小鳥たちにあげたの」
話しかけられた声は、鈴が鳴るように可憐だった。息を呑みそうになるのを必死に耐えた。
「そしたら小鳥たち、お礼に歌を歌ってくれたわ。私たちはその歌に合わせて踊るの。とっても楽しいのよ!・・・貴方にも見せたかったな」
声は次第に小さくなっていった。とても切なそうな声色だった。