必死にベッドによじ登り、月明かりに照らされた顔を見た。それは、人形が今まで見たことのないほど繊細で美しい顔をしていた。
すっと通った鼻梁、形のよい薄い唇、少しクセ毛の金髪が、月明かりでキラキラと輝いてみえた。長い睫毛に縁どられた瞳は生憎見ることができないが、人形が恋に落ちるには十分だった。

「なんて美しい人形でしょう。でも、どうして貴方は夜に目を覚まさないの?」
人形は、そっとその頬に触れた。驚くことに、その肌はホットミルクのように温かかった。そこでようやく、人形は気がついた。昔聞いたことのある、自分たちを作り出した『にんげん』というものを。
そしてこの美しい方こそが、その『にんげん』であるということを知ったのである。